20名限定の専用病棟で主治医面接や精神分析的グループ療法などを行います。3カ月間の入院治療が基本ですが、これは長期にわたるパーソナリティ障害の方の治療の入り口です。退院後のフォローや治療の継続も含めて、ご相談に対応します。

はじめに ~パーソナリティ障害の方の入院治療にあたって~

パーソナリティ障害とは、現実社会にあって自分という1個の人間としての生き方を見失ってしまった人達の持つ「心の困難性の在り方」をとらえた精神疾患(障害)のひとつです。
それは人と人との関係性において湧き上がってくる、特に悲しみや怒りなどを自分の内に抱えきれずに、あるいは感じきれずに、それらを行動化(注1)や身体化(注2)というかたちで表出してしまう人達の心の在り方を表していると言えます。

(注1)行動化=リストカット・大量服薬などの自殺企図や閉じこもり・非行・性的逸脱行為などの社会的問題行為。
(注2)身体化=器質的原因がわからない身体疾患や摂食障害・心身症・ぜんそくなど。

そのような方々にとっては、入院治療の場である病棟においても現実社会で起こっていることと同じことが起こると考えられますので、入院生活のなかでの出来事がそのまま治療の題材になります。
それらの日々の題材をもとに、また治療者を含むさまざまな人間同士の関係性の中で、「言葉」を介して患者さんが自分を取り戻してもらうための作業を積み重ねることが大切な治療です。
このような精神分析理論を背景に、医療専門職がかかわるチーム治療としてパーソナリティ障害の方の入院治療が可能になります。

対象となる方

  • 小さい頃から周囲の人に溶け込めなかった、そもそも自分という人間がわからない、生きている意味がわからなくなった、すべて自分が悪いんだとしか思えない、などといった自分という1個の人間としての意味や生き方を見失って希死念慮を抱いている方。
  • 周囲の人達との関係性から自分の中に湧き上がってくるさまざまな情緒(怒りや悲しみ)を感じきれずに、行動化(自殺企図や社会的問題行為)や身体化(原因不明の身体疾患や摂食障害・心身症・ぜんそくなど)として表現されているだろうと推察される方。

上述に該当する方で、それらの状態を心の在り方の障害として認識することができ、治療動機がある方が対象です。

このような方は初期の症状として抑うつ症状(頭痛・めまい・節々の痛み・不眠・倦怠感などの身体症状とともに、うつ気分・自責感・自己不全感・意欲喪失などの精神症状)を呈している場合が多いようです。

利用までの流れ

  1. 当院へご相談のお電話をお願いします。すでに精神科通院中の方はまずは主治医にご相談のうえ、主治医から当院へご連絡をお願いします。
  2. 当該プログラム担当医の診察を受けていただきます。この段階で担当医が入院の適応と判断した場合は入院治療が開始されます。
  3. 数回のアセスメント面接が実施される場合もあります。
    入院治療プログラムの適否について本人や家族の思いも含めて話し合われます。この期間は患者さん-治療者関係の樹立の時期でもあり、お互いの信頼関係を築き上げる時期でもあります。その間に心理テストを受けていただくこともあります。
  4. 以上のようなプロセスを経て、入院治療プログラム適応と判断された方の入院治療が開始されます。
    なお、適応でない方につきましてはご希望に沿いかねる場合もございます。あらかじめ、ご了承ください。

プログラムの内容

パーソナリティ障害の方のための入院治療は、同一疾患の方専用の病棟(20床。特別個室―バス・トイレ有り、個室、4人部屋など)で、3カ月間を基本としています。

具体的な入院治療プログラムには以下のものがあります。

主治医との定期面接

パーソナリティ障害を専門とする精神科医によって、入院治療の目的と目標を設定し、投薬や身体管理、プログラムの進捗状況を退院まで定期的(週1~2回)に話し合います。

臨床心理士によるカウンセリング(心理療法)

心理テストに引き続き、主治医の判断に基づいて個人カウンセリングを受ける方もいます。

病棟看護師による日常生活への援助

  • パーソナリティ障害の方の看護に特化した看護師が少人数のチームを組み、 看護に当たります(チームナーシング制)。
  • お一人おひとりの患者さんに担当看護師が付きます(受け持ちナーシング制)。
  • 日常生活における課題を話し合い、規則正しい生活を送るための相談に対応します。
  • 病棟内での対人関係や治療環境が円滑に働くように支援します。

作業療法活動

活動を通じて、患者さん自身が対人関係の在り方やその特性に気づくことができます。病棟担当の作業療法士の指導・支援によって、病棟の患者さん全員で行うレクリェーション・軽い運動などの集団活動と、個人で行う創作活動などの作業療法が施行されます。後者の作業療法については、面談を通じて各個人に適したプログラムが実施されます。

グループ療法

週2回各50分間、病棟の患者さん全員と病棟担当の各専門職のスタッフが参加する精神分析的グループ療法が行われます。

家族面談、ケースワーク

必要に応じて、担当の精神保健福祉士(精神科ソーシャルワーカー)による家族面談が行われます。また、退院後の生活や仕事についても相談できます。

これらの入院治療は、長期にわたるパーソナリティ障害の方の治療の入り口です。当院は退院後も通院治療の継続・再入院などの体制を整えておりますので、安心してご相談ください。