認知症になっても楽しくお買い物を

皆さんは聞かれたことがあるでしょうか? 私は今年の6月に初めて聞きました(読みました)。 2022年6月26日(日)認知症になっても楽しく買い物ができる社会を考える~前向きに社会参加できるあたたかい社会を~というシンポジウムにオンラインで参加いたしました。主催は福岡県で委託先は福岡県若年性認知症サポートセンターでした。中間市のなかまハーモニーホールで開催され、久しぶりに元タレントで現中間市長の福田健次氏の姿も拝見いたしました。
チラシには「認知症の方が買い物に行くと、お金を支払うことを忘れて品物を持ってきてしまいということが起きる、とあります。本人は決して意図的にそのような行動をとっているわけではなく、認知症により支払いを済ませていないことを「忘れる」という症状によるものです。」と書かれていました。

高齢者にキャッシュレスサービスを

シンポジウムにはK社の方がパネラーとして参加されていました。「誰もがお買い物を楽しみに続けられる世の中にする」というVISIONで「高齢者にキャッシュレスサービス」を提供されている会社だそうです。なんだかアンケートに答えたことで、この会社の役員さんとオンラインで1時間ほどお話いたしました。今日はこの二つのことから感じたことを書いてみます。

最初に感じたこと

認知症の人がうっかり支払いを忘れるという事は容易に想像がつきました。そうなると万引きと間違えられ、ご家族はご本人を守るためにお財布を預かるのなどの対策を取りがちなのでしょう。でもこれは人としての尊厳を大きく損ねる方法ですよね。
払い忘れが起こるから買い物を取り上げ、道に迷うから外出を取り上げ、怪我をするかもしれないから包丁(料理)を取り上げ・・・いったいどれだけのものを取り上げるのでしょう。声高に認知症ケア・高齢者ケアには自尊心と尊厳を守ることが重要とか言っても、これではご本人は大きく自尊心や自信を失い、傷つき混乱して症状の悪化を招き負のスパイラルへと落ちていくのかもしれません。もっと認知症の方にやさしいまちづくり、認知所の方をリスペクトする支援があれば、ご本人はもっともっと輝き、周囲の方の負担も減るのではないでしょうか?
確かに由々しき問題ですが、現在日本中のいたるところで怒っている現象だと思います。由々しきといっても人が人を理解して解決方法を考えるのですから、このやり方が良くないと分かっていてもそうそう良い方法が見つかるわけでもありません。

よくよく考えてみたこと

万引きと払い忘れの状況? 原因? は明確に分けるべきだと思うのですが、実際にはそう簡単でもないですね。店舗からすれば支払いなしに商品を持ち帰るのですから現象? 結果? としては同じことかもしれません。店舗側に納得のいく原因と状況の説明や、支払いの担保が必要かもしれません。
地域包括支援センターが介入し、ご家族が店舗にお話に行きご理解いただいて、「払い忘れ行動」があったときにはあとからご家族が支払うようなケースもあるようです。店舗側のご理解と相互の信頼関係がないととてもできませんね。店舗にとっては手間が増えています。
K社のサービスを使ってみました。私は比較的キャッシュレスな生活で複数のカードや〇〇ペイなど利用しており、K社のサービスが特別に便利という事ではありませんでしたが、もろもろ付加価値が付いていました。近年メーカーによる高齢者向けの家電なども開発されており、「高齢者向け」という様々な商品やサービスの必要性が今後ますます高まっていくものと思います。一般的に計算能力が低下してくると買い物の際「お札を出して小銭が大量にたまる」、「小銭は使えない」や「何にいくら使っているのかご家族が把握できずに支援が困難」などの事例が増えていることも指摘されています。若年層(一応私も)の利便性と高齢者の利便性では求められる機能が違うのでしょうね。高齢者は利便性よりも安全性だったり、これがあることで買い物が継続できたりといった視点が必要なのでしょう。

小遣いをついつい使いすぎる成人した我が家の息子に持たせてみようかとも考えています(笑)。

認知症の人

「認知症」という人はいません。「そこの眼鏡」、とか「そこののっぽ」などよからぬ表現があります。「認知症」とひとくくりにするのは無理があります。「あの人ニンチ」などはもう差別用語だと思っています。
病名が違い、程度が違い、症状が違います。これが「認知症の人」になるともっと複雑です。そもそも「認知症の人」ではなく「○○さんが認知症になった」わけで、○○さんは十人十色です。

重度の認知症の人

実は「重度の認知症」という言葉がどういう意味で使われているか? 実はよくわからないのです。(学術的にではなく、普段一般の方や専門職の方が会話の中で使うときです)
例えば認知機能が少ししか低下していないからこそ、ご本人は周囲の支援を受け入れず、周囲もご本人の状況を理解できず、生活に大きな支障をきたしたり、人間関係に大きなひびが入ったりすることがあります。症状は軽いですが困りごとは大きいです。
逆に記憶力は大きく低下していて今食べたごはんも忘れてしまい何度も「ごはん食べる。」を繰り返してもご本人が穏やかで「ご飯作ろうね」と対応すると「ありがとうね」としばらくニコニコして下されば人間関係が良好で支援がうまくいくこともあります。先ほどの逆ですね。どちらが重度なのでしょうか? 症状の重さがそのまま障がいの重さに繋がらないケースがたくさんあります。

認知症の人の買い物

「認知症の人にもやさしいデザインの手引き」(福岡市)の時も同じ話になったのですが・・・最重度の認知症の方が自分だけで買い物をするのは難しいかもしれません。どちらかというと認知症になる前の、認知機能の虚弱状態の方にも支援が必要で有効であって重度化してしまうと何をするにも難しい気がします。
姉夫婦の話です。姉の夫が携帯電話(当時スマホはまだ普及していませんでした)のメールが読みにくいという事で、姉が文字を大きく設定したそうです。そうやってみるととても見やすいという事で姉の携帯電話の文字も大きくなりました。60歳前だったのですが・・・。
買い物が難しくなってから支援システムを導入するより、まだまだやれる時から支援システムが入ると適応もずっと早く済みますね。