「摂食障害」とは

摂食障害は、食行動を中心にいろいろな問題が表れる病気です。主に「神経性やせ症」と「神経性過食症」の2つのタイプに分けられます。摂食障害は女性の割合が高く、10〜20代の若者がかかることが比較的多いですが、性別、年齢、社会的、文化的背景を問わず誰でもかかりうると言われています。 早期発見と適切な治療が重要で、周囲の理解とサポートも、回復への大きな助けとなります。

神経性やせ症の特徴

「神経性やせ症」は、体型や体重に対する過度の恐怖と、体重減少に対する強迫的な追求が特徴です。患者さんは明らかにやせていても、自分自身はそれを異常と感じられません。自身で食べる量を制限しますが、反動で過食が出現し、嘔吐や下剤の使用などで体重増加を防ぐ代償行動が見られることもあります。「神経性無食欲症」や「拒食症」などと呼ばれてきましたが、必ずしも食欲が無いわけではなく、過食が見られることもあることから、「神経性やせ症」という新しい病名が提唱されています。低栄養に伴う体内のナトリウム・カリウム・塩化物といった電解質のバランスが崩れたり、極度の脱水からの心臓の不整脈や腎不全、極度の低栄養状態から急に食物を摂取しての再栄養症候群など、合併症や身体リスクを引き起こすことがあります。心身両面のケアが必要で、低栄養が進むほど治療が難しくなるため、早期の対応が求められます。

神経性過食症の特徴

「神経性過食症」は、食のコントロールが難しくなり、頻繁に過食をしてしまう病気です。過食に加え、嘔吐や下剤の使用などで体重増加を防ぐ代償行動が見られることもありますが、どちらも人前では出ない症状のため、周囲の人たちには気付かないこともあります。自分でも病気とは思わず、援助を求めないことが少なくありません。身体症状として、最も一般的なリスクは、嘔吐や下剤の乱用による電解質異常です。嘔吐が度々あると歯牙侵食・唾液腺腫脹・吐きダコがみられることもあります。頻繁な嘔吐は食道の損傷や出血、虫歯の原因となります。(これらの特徴は、嘔吐の症状がある神経性やせ症にもみられます。) 治療を受けずに放置すると、身体症状が進んだり、うつ症状が強まったりすることもあります。「神経性過食症」と、一般的に健康な人にも時には見られる「やけ食い」などの行動とはっきり区別できないケースもあり、病気かどうかを判断するのは難しい事もあります。

摂食障害の原因

多くの研究が進められていますが、明らかな病因は現在のところ不明です。心理的要因、環境も含めた社会的要因、脳も含めた生物学的要因が絡み合っていると考えられています。
ボディイメージの歪み、完璧主義的思考、無理なダイエット、職場・学校の環境や人間関係などからくるストレス、対人関係のストレス、家族関係などさまざまなことがきっかけとなると言われています。ただ、家族関係が原因となるという明確なエビデンスがあるわけではありません。

他の疾患との合併も

他の疾患との合併も多いとされ、精神疾患ではうつ病、不安症、依存症にも注意が必要です。更に、身体的にはインスリン治療が必須な1型糖尿病に合併しているケースもあります。
長期にわたると、栄養失調によるやせすぎ、低血圧、無月経、体毛の密生化、しびれ・むくみ、腹部不快感、肝臓・腎臓・胃腸の障害、骨折しやすくなるなどの影響も出ます。摂食障害の影響が長引かないうちにそのサインや症状に気づいたら、できるだけ早く専門医に相談しましょう。

治療

摂食障害は、体重や食事、栄養だけの問題ではありません。心身両面からの専門的な治療が必要です。なかでも認知行動療法・家族療法、心理教育や、栄養療法などが有効とされています。さらに症状の重さ、他の病気の合併や、背景の問題などを多面的に評価し、それに応じた治療的アプローチが必要です。身体の異常がみられるときはそれに対する身体的治療や薬物療法を組み合わせた治療が生じます。顕著な低体重がある場合、総合病院で集中的な身体管理を要することも稀ではありません。

摂食障害は回復することが期待できる病気で、早く治療を開始できたほうが回復が早いともいわれています。重症化や合併症などがおこる前に、早期に適切な治療を受けることが望ましいです。摂食障害が疑われるときは、できるだけ早く受診し、専門家に相談して治療を受けることが大切です。

参考
厚生労働省【こころをメンテしよう~若者を支えるメンタルヘルスサイト~】

福岡県摂食障害支援拠点病院