状態に対する本人と家族の認識

双極性障害は気分が高まったり落ち込んだり、躁状態とうつ状態を繰り返す脳の病気で、家族や身近な人にとっては、激しい躁状態のみならず、うつ状態で身体を動かすことも辛いような姿を間近で見守るということも大変なことです。
双極性障害という病気の期間の3~5割は、うつ状態が占めるといわれています。その間は本人にとっては長くて辛いものですが、一転して躁状態になると、本人はエネルギーに満ちて調子がいいと感じます。そのため、家族は激しい言動が生じる躁状態は大変だから、むしろうつ状態でいてくれたほうがよいと考えてしまうこともあります。
このよううに、病気である本人と家族や身近な人の間に認識の違いがあると、治療のうえでも好ましくありません。ですから、以下のような双極性障害の方への接し方を参考にしていただきたいと思います。

再発の兆しに気づく

まず、本人と家族で振り返り話し合ってほしいことがあります。それは、躁状態になった時に最初にどんな症状が出やすいか、どういうストレスが再発の引き金となりやすいかということを把握しておくことです。家族や身近な人が「どうもおかしい」と気づいた場合や明らかに再発の兆しがみられた場合は、すぐに主治医と相談することが大切です。

自殺のサインはないか

双極性障害の方は、その症状の影響で自死により亡くなるケースは少なくはありません。ですから、以下のような自死のサインには充分注意してください。

自殺のサイン

  • 「死にたい」「消えてしまいたい」などと言う
  • 遺書を書くなど自殺の準備をする
  • 別れの言葉を告げたり大切なものを渡したりする
  • 身の回りのものを整理する
  • 過度の飲酒をする

自殺の危険を高める因子

  • 自殺未遂を行った過去がある
  • 身近な人を自殺で亡くした経験がある
  • 最近近親者が亡くなった
  • 最近有名人や知人が自殺した
  • 経済的に大きな損失を受けた
  • 本人をサポートしてくれる家族や友人がいない

まずは生活のリズムを整える

生活のリズムの乱れは病気を悪化させます。再発を防ぐためには、何より規則正しい生活リズムを維持することが大切です。起床時間、食事の時間、就寝時間をほぼ決めて、同じリズムで生活できるようにします。特に好ましくないのは徹夜です。一晩の徹夜でも躁状態になってしまうことがありますので、極力避けてください。規則正しい生活が送れるように家族や職場・学校の方の理解と協力が必要になります。

治療を継続する

残念ながら、双極性障害は再発しやすい病気です。症状が改善したからと自己判断で薬の服用をやめてしまうと再発してしまいます。そのため、家族や身近な人がサポートし継続的な治療を行う必要があります。病気が安定期に入っても、再発予防のために薬を服用し続けます。治療の継続、薬の服用については、主治医へ相談することが大切です。

ストレスとの付き合い方を考える

双極性障害では人間関係から生じるストレスがきっかけで調子を崩し、うつ状態や躁状態に陥ることがありますので、本人がストレスを抱え込まないように家族や身近な人に気軽に相談できるような環境を整えてあげるとよいです。

状態別の接し方

躁状態のときの接し方

家族や身近な人が本人に対して「いつもと違う」「人格が変わったみたい」「やり過ぎでは」と驚きや戸惑いを感じるときは、病的であることを示す重要なサインで、受診を促す必要があります。躁状態はあくまでも病気によるもので本来その人の性格によるものではないのですが、本人には病気の認識がなく、この状態こそが本当の自分だと思っていることがあります。ですから、素直に受診してもらうことはなかなか難しいことが多いので、「近頃あまり寝ていないようだから、身体の調子が心配だ」というようなかたちで受診を促すと良いでしょう。その場合に本人が信頼している目上の人が口添えしてくれると受診がスムーズなようです。本人に全く異なる理由や行き先を伝えるなど、だまして病院に連れて行くようなことはお勧めできません。
躁状態の場合はほとんどのケースで、入院して、しっかり休養をとり気持ちを穏やかにすることが効果的です。本人は「入院の必要はない」と言う場合が多いのですが、放っておくと、怪我をしたり、他人を傷つけたり、社会的な信用を失ったり、多額の浪費してしまうなど、本人や家族が大きな不利益を被ることになってしまう可能性があります。
入院を拒絶して症状が顕著に悪化したり、家族への暴力行為が見られたりする場合は、警察へも相談してみましょう。

うつ状態のときの接し方

うつ状態のときには休養をとることが最も大切です。躁状態でやってしまった言動や失敗を後悔して苦しんでいたり、ものの見方も否定的になっていたりするので「家族の応援に応えられない自分はダメだ」と自分を責め、さらに状態が悪化してしまうこともあります。 仕事や家事が思うようにできないときはサポートをお願いします。まずは休養によって心と身体をしっかり休めることが大切ですから、励ましや気晴らしはできるだけ控えたほうがよいでしょう。責めないでそっとしてしてあげるのがよいです。
また、本人が自殺をほのめかしたら、批判したり励ましたりするのではなく、聞き役になり、その気持ちをしっかりと受け止める態度を示すことが大切です。「自殺したい」と口にするだけでも、本人の緊張が多少は解消されると考えていただいて良いと思います。この場合は、本人を大切にしているということを伝える必要があります。「あなたに死なれたら、私や家族・友人はとてもつらいから、死なないで」という気持ちをしっかり本人に伝えることがとても重要です。口約束でいいので、「死なない約束をする」というのも自殺の危機を減らすのに役立ちます。もし、本人が約束もできないくらい思い詰めている場合は、すぐに主治医に相談してください。