これまで福岡市内の4つの精神科病院(可也病院・みなかぜ病院・倉光病院・油山病院)合同で「4病院の勉強会」を開催してきましたが、今回から「多職種で考える精神科臨床の会」と名称を改め、より一層地域連携とチーム医療について深める勉強会が発足しました。

11月14日は、その第1回目として油山病院北館多目的ホールで2講演が行われました。

最初の講演は、うえむらメンタルサポート診療所の院長 上村敬一先生による「外来でのアルコールプログラムについて」です。同クリニックは、「福岡県・福岡市依存症専門医療機関」に診療所としては唯一認定されたクリニックです。上村先生は日頃から「仕事や家庭など全てを無くして初めてアルコール依存症の治療を開始」するのではなく、そうなる前に治療を開始することを重視され、ご自身のクリニックで勤労者の依存症治療を実践されています。

講演のなかでは、アルコール依存症は「コントロール障害」であることを明言され、従来の「完全断酒の治療方針」ではなく「ハームリダクション」という患者のニーズに合った治療選択を行うことの必要性を力説されました。

次の講演は、油山病院の救急病棟をを担当する鮫島達夫医師から「ECTの医療スタッフ・医療連携~リスク管理から考えよう~」が行われました。まずはECTとは何かについて実際のECT施行の動画解説を交え、さらにその歴史・変遷を踏まえた説明が行われました。対象となる患者層のなかで緊張型症状群(カタトニア)と診断される方が多いと感じておられることや、ECTの即効性にお話しされました。あくまでもECT施行は精神科において安全な治療であるという認識があるが、その点で他科とは認識にギャップがあり、相互理解を進め、より安全なECT施行を目指したいとのことでした。またより良い連携のための分かりやすい「m-ECT 患者紹介シート」も参考資料として配布されました。

今回の座長を務めていただいた可也病院院長の栗田輝久先生は、「2つの講演を聞き、精神科のなかでそれぞれの機関が特徴や特異性を顕著にしてきていることを実感しました」とコメントされました。これからも、病院間スタッフで互いに研鑽し精神科医療の向上に尽くしたいと思います。

第1回多職種で考える精神科臨床の会の様子

第1回多職種で考える精神科臨床の会の様子2