医療関係者の方から当院へ多く寄せられるご質問にお答えします。

当院のような精神科病院の受診・入院について、一般科の病院・クリニックの医療関係者の方々は「精神科の入院って敷居が高い」「なかなか受けてもらえない」「どんな人を紹介したらいいの」など多くの疑問をお持ちのように感じております。そこで、当院の地域医療連携部ではこれまで他の医療機関の皆様から多くいただいたご質問内容と当院の基本的な回答を以下のように整理いたしました。何卒ご覧いただき、ご相談ケースのご参考にしていただければ幸いです。なお、あくまでも回答は一般的なものでお一人おひとりの状況よって異なる場合がございますので、あらかじめご了承ください。本文についてご不明な点や、外来受診・入院のお問い合わせやご相談につきましては、これまで同様にお気軽に地域医療連携部へお電話くださいますようお願い申し上げます。

主なご質問項目

  1. 精神科病院(油山病院)では、どのような治療が行われているのですか?
  2. 精神科の入院って、なぜ複雑でわかりにくいのですか?
  3. ご家族と疎遠な独居老人の方は、入院が難しいでしょうか?
  4. どのような病状の患者さんが精神科病院の対象になるのですか?
  5. 入院させたいのですが、本人を連れていけない場合は、どうしたらいいでしょうか?
  6. 一般科と違い、予約しないと受診できない場合が多いのはなぜですか?
  7. 患者さんの紹介や外来受診・入院の相談はどうしたらよいでしょうか?

1. 精神科病院(油山病院)では、どのような治療が行われているのですか?

Q. 精神科病院ではどのような治療がされているのか、よくわかりません。油山病院の治療について教えてください。

A. 当院のように精神科救急・急性期を有する精神科病院では患者さんの症状の早期安定・退院を目指し、さらに退院後の生活をサポートする精神科訪問看護や疾患別のデイケアを整えて継続的な治療を行っています。おたずねの精神科病院の治療について、当院の例をもとに、以下のように「外来治療」と「入院治療」に分けてご説明します。
外来治療と入院治療のチャート

外来治療

  1. 精神療法
    患者さんの精神的安定を図り、人格の発達、成熟を促し、問題行動を改善することを目標に面談していきます。精神分析的アプローチや集団療法なども含まれます。
  2. 薬物療法
    向精神病薬を使用する治療が主体ですが、患者さんの症状に応じてさまざまなお薬を使用していきます。
  3. 精神科リハビリテーション
    当院は患者さんの疾患や状況に合わせて、以下のような精神科における心身のリハビリテーションを行っています。他の精神科クリニックなどに通院中の方でも通院先の主治医にご相談いただき、主治医の指示書をいただければご利用が可能です。なお、精神科のデイケアは精神疾患をお持ちの方が対象で、介護保険対象のデイケアとは異なります。
    • デイケア(統合失調症の方のためのデイケア)
    • 気分障害デイケア(うつ病、双極性障害など気分障害圏の方のためのデイケア)
    • リワークプログラム(うつ病などで休職中の方などの復職支援プログラムを行うデイケア)
    • ゆうゆうクラブ(精神疾患をお持ちで、介護保険非該当の高齢者のデイケア)
    • 外来OT(作業療法)活動(集団が不得手な方のための小グループや個人での作業療法)
  4. 各種検査
    一般科と同様に血液、尿、X線、CT、脳波など診断に役立てる検査が可能です。その他にも、確定診断の補助に役立つ光トポグラフィー検査、軽度認知障害を早期発見するMCIスクリーニング検査、治療の参考にしていただくための各種心理検査を行なっており、これらの検査は外部の医療機関からのご依頼にも対応しています。
  5. 精神科訪問看護
    精神科に精通した保健師、看護師、作業療法士が訪問活動を行っています。精神科訪問看護は、精神疾患の方・高齢者の方の健康管理、日常の看護(清潔・食事・排泄などの援助)、悩みごとの対応、福祉制度の利用などに対する相談、ご家族への指導を行なっております。さらに24時間365日ご利用者により安心いただける訪問活動体制も整えています。当法人の訪問看護は、精神科リハビリテーションと同様、他の精神科クリニックに通院中の方も主治医から指示書をいただければご利用が可能です。

入院治療

  1. 精神療法
    当院では入院生活に携わる全てのスタッフとのかかわりを「精神療法」と捉えております。入院生活で生活リズムを整えながら、医師・看護師はもちろんさまざまな精神科医療の専門スタッフのアプローチや多くの交流によって精神的な安定を取り戻せるようになります。
  2. 薬物療法
    入院治療において症状を改善するための薬物療法が重要であることは言うまでもありません。入院当初は毎回看護師が患者さんお一人おひとりに配薬してまいりますが、退院間近になると患者さんご自身で薬の管理をしていただき、退院後も服薬管理がスムーズにいくようにサポートしていきます。当院は難治性統合失調症に有効なクロザピン治療も行っております。
  3. 作業療法
    各病棟には専属の作業療法士が配属され、月曜~金曜(一部土曜も実施)まで治療を目的としたいろいろな作業療法が行われています。精神疾患についての心理教育などもプログラムに入っております。
  4. 各種検査
    外来治療の検査とほぼ同じ
  5. その他:専門性の高い治療(mECT)
    当院は修正型電気けいれん療法(mECT)(現在は一時的に休止しております)を行っております。mECTとは全身麻酔下で筋弛緩薬を使用し、頭部に通電することで精神症状を改善する治療法です。対象となる方は希死念慮の切迫した方、重度のうつ状態の方、統合失調症の緊張型、顕著な幻覚妄想状態、治療抵抗性、難治性の精神病圏疾患などです。治療の対象の方については身体的状況等もふまえ多角的に検討しますので、患者さんによって適応判断は異なります。当院では担当医が総合的に判断して施行の有無を決定しますが、ご相談ケースについては事前に地域医療連携部までお電話いただきますようお願いいたします。
  6. 地域医療連携部
    TEL : 092-871-2261(代表)
    FAX : 092-871-2290(直通)

    2. 精神科の入院って、なぜ複雑でわかりにくいですか?

    Q. 精神症状がある方の入院相談ケースで精神科病院になかなか受け入れていただけないことが多いように感じます。なぜでしょうか。

    A. 精神科医療においては患者さんの多くは病識がないため、治療に至らずトラブルを引き起してしまうことがあります。そのため、入院においては人権を配慮したうえで適切な治療が受けられるように、精神科の医療従事者は「精神保健福祉法」という法律に則って診療していく義務があります。「精神保健福祉法」は、精神障害者の医療および保護、精神障害者の社会復帰の促進、精神疾患発生予防などを目的とした法律で、多くの規則があります。

    ご質問いただいた「精神科の入院がわかりにくい」理由として、「精神科の入院」には5つの種類があることが挙げられますが、ほとんどの入院は「任意入院*1」と「医療保護入院*2」です。他の3種類は特別な場合で、数少ない入院と思っていただいて結構です。入院治療は任意入院での治療が望ましく、実際には多くの方が任意入院であり、ご本人が不調を感じて治療の必要性を理解されて入院しています。

    1「任意入院」とは、患者様が入院治療の必要性を理解してご自分の意志でする入院。 2「医療保護入院」とは、患者様が病気であることや治療の必要性を十分に理解や判断できず、精神保健指定医の判断と家族等の同意によるもので患者様にとっては不本意となる入院。

    入院種類一覧

    ご参考:入院形態一覧
    種類内容
    任意入院患者様ご本人の同意に基づいて行なわれる入院。ご自分の意思で入院し、ご自分の意思で退院ができます。ただし、病状によっては72時間に限り精神保健指定医の判断により退院を制限する場合があります。
    医療保護入院患者様ご本人の同意がなくても精神保健指定医が診察の結果入院の必要性があると判断し、家族等が入院に同意した場合に行なわれる入院
    応急入院患者様ご本人または家族等の同意が得られない場合でも、精神保健指定医が診察の結果緊急の入院が必要と判断した場合に72時間を限度として行なわれる入院
    措置入院自傷他害(自分で自分を傷つける、他人に危害を加える)の恐れがある場合で知事の診察命令による2名の精神保健指定医が診察の結果、入院が必要と判断した場合に知事の決定によって行なわれる入院
    緊急措置入院措置入院の手続きが取れず緊急を要する場合、72時間に限り1名の精神保健指定医が診察の結果、入院が必要と判断した場合に知事の決定によって行なわれる入院

    地域医療連携部
    TEL : 092-871-2261(代表)
    FAX : 092-871-2290(直通)

    3. ご家族と疎遠な認知症の独居老人の方は、入院が難しいでしょうか?

    Q. 独居老人の方(子どもたちは県外で生活し、かかわりを持ちたがらない)が認知症になられ、ご近所ともトラブルが生じていますが、精神科病院に入院できませんか?

    A. 最近このようなご相談が増えています。認知症が進み入院治療が必要な状況であっても、同意者(子ども)が県外でなかなか帰福してくれず、入院につながらないケースです。精神科病院の入院において、認知症の方の多くは医療保護での入院が基本となります。任意入院で入院なさると、本人が入院治療についてきちんと理解していらっしゃらないために退院願望が募り、ご本人の退院請求があれば当院としても治療継続の必要があっても退院させなければなりません。ですから、入院をご検討ご依頼いただく場合は、以下のことをご確認いただければスムーズな入院につながりやすくなります。

    1. ご本人の3親等までの家族がいらっしゃいますか。
    2. そのご家族は入院に同意し、入院時同伴していただけますか。
    3. 仮に3親等内のご家族が全く生存しないことが明らかなら、病状によっては医療保護による入院が可能になり得ます。
    4. 身体合併症はお持ちなのか。お持ちの場合、そのコントロールは良好でしょうか。

    当院としても、地域の高齢者の方々にとって「住みよい町」の精神科病院としてお役に立ちたいと考えております。1~4の情報提供につきましては大変ご面倒おかけしますが、一層のご理解ご協力をお願いいたします。

    地域医療連携部
    TEL : 092-871-2261(代表)
    FAX : 092-871-2290(直通)

    4. どのような病状の患者さんが精神科の対象になるのですか?

    Q. 精神疾患といっても、かなり領域が広いように思いますが、油山病院ではどのような方を診てもらえるのでしょうか。

    A. 当院は、主に統合失調症、うつ病、感情障害(躁うつ病含む)、神経症、パーソナリティ障害、認知症などの疾患を対象に治療を行っています。残念ながら、依存症関係(アルコール、薬物、ギャンブル等)の治療プログラムは有しておりませんので、それらでお困りの方へは専門の精神科病院・クリニックなどをご案内しています。また、急性期の身体疾患が疑われる方や慢性疾患のコントロール不良な方の入院は、お引き受けできない場合がございますので、あらかじめご了承ください。
    ご質問のように精神科治療の対象になるのかどうか、ご判断に迷われる場合は当院地域医療連携部に直接ご相談いただければ、可能な限り対応させていただきます。

    地域医療連携部
    TEL : 092-871-2261(代表)
    FAX : 092-871-2290(直通)

    5. 入院させたいのですが、本人を連れていけないのでどうしたらよいでしょうか?

    Q. 本人が精神科受診を拒むためになかなか病院やクリニックに連れていくことができません。こういう場合、どうしたらよいのでしょうか。

    A.そのようなご質問は、当院へのご相談のなかにも少なからずございます。精神保健福祉法が施行される前は精神科病院からご本人をご自宅に迎えに行くこともありましたが、人権尊重を重んじる精神保健福祉法の施行後は当然そのようなことが禁じられました。
    そのため、私ども精神科病院の立場としては「多くの人の力を借りて、何とか当院まで連れてきてください」と申し上げることしかできません。ただし、興奮が激しい場合や暴力をふるったりされる場合であれば、警察のご協力が得られることもありますので、まずは警察へお電話でご相談なさってください。(他県では精神科への搬送業務を行っている民間会社もございますが、時間や費用が結構かかりますので、あまり現実的ではないかと思います)また、少数ですが精神科の訪問診療を行っている先生もいらっしゃいます。病状によっては訪問診療をご検討なさっても良いと思います。

    地域医療連携部
    TEL : 092-871-2261(代表)
    FAX : 092-871-2290(直通)

    6. 一般科とは異なり、予約しないと受診できない場合が多いのはなぜですか?

    Q.精神科病院は診療の予約が必要なところが多くて、不便な気がします。なぜ予約なしでは診てもらえないのでしょうか。

    A.精神科の初診は、現在困っている症状をご本人もしくはご家族から聞いた後、幼い頃からの成長や発達、学生時代の様子、就職・結婚後の様子など、本人の成長過程を細かく伺ってまいります。精神科は一般科と異なり、一般的な検査データや画像で診断できるものではないため本人やご家族のお話をもとに精神科専門医が診断しております。そのため、特に初診では一般科よりは時間がかかり、60~90分の診察になります。その後に心理検査や血液検査、画像検査などを行いますと、初診の場合は当日2~3時間を要します。このように丁寧で適切な初診を行うために皆様に予約をお願いしております。
    ただし、急な入院が必要な症状の場合(興奮、混乱、激しい妄想状態など)は予約なしでの対応を行っております。その場合も、まずは事前のお電話をお願いいたします。

    地域医療連携部
    TEL : 092-871-2261(代表)
    FAX : 092-871-2290(直通)

    7. 患者さんの紹介や受診・入院の相談はどうしたらよいでしょうか

    Q.油山病院に、患者さんのご紹介や外来受診・入院の相談をするときはどうしたらよいでしょうか。

    A.当院では、患者さんのご紹介や外来受診・入院のご相談は地域医療連携部に窓口一本化して承っております。お電話によるご相談の際は、地域医療連携部の看護師(基本的には看護師が対応。精神保健福祉士が対応する場合もあります)が、患者さんの症状・既往症や背景・ご家族の状況などの情報を簡単におたずねいたします。そのお電話の後に、診療情報提供書をFAXか郵送でお送りいただくようにお願いしますが、届き次第拝見し、できるだけ早くお返事できるよう努めております。なお、ご面倒おかけしますが、診療情報提供書につきましてはお早目の送付いただきますようご理解ご協力をお願い申し上げます。

    地域医療連携部
    TEL : 092-871-2261(代表)
    FAX : 092-871-2290(直通)