1月20日の法人学習会では、入澤医師と慢性期患者さんが多い病棟を担当する看護師を講師として「強度行動障害を伴う発達障害」および「ストラテジーシート」について学習しました。今回は、特に精神科に従事する者として改めて倫理・人権を顧みて、最新の医療的アプローチを学ぶ機会でしたので、法人職員約80名が集まり熱心に受講しました。

まず、入澤医師から「強度行動障害とは必ずしも医学による診断から定義される群ではない」ことを踏まえたうえで、「直接的・間接的な他害行為や自傷行為が通常では考えられない頻度と形式で出現し、その療養環境では著しく処遇困難な者をいい、行動的に定義される群」との説明がありました。これらの主に重度の知的障害を伴う自閉症スペクトラム症の方々については、従来は重症度心身障害医療という枠組みのなかで障害者施設など福祉分野が大きくかかわってきているが、近年は医療分野でも緊急避難的な本人保護や家族・施設スタッフのレスパイト、検査、薬物調整などのかかわりを持っています。しかし、薬物療法のみで行動障害が改善することは期待できないので、現在は精神科においても薬物療法よりも非薬物療法に重きをおいた医療的アプローチに変化していく転換期を迎えています。すなわち、困った行動がどういう状況で生じやすいか、どういう状況なら起こりにくいか、などの行動分析を行い、行動障害に有効な支援を行うことが好ましいとのこと。これを「強度行動障害支援技法」と呼び、構造化された環境の中で医療と連携しながら、一貫した対応可能なチームでかかわり地域で自立できる体制をめざそうというものです。

次に、当院の慢性患者病棟を担当する看護師が上述の行動療法のアプローチの前提となる「ストラテジーシート」を現在実際に用いてかかわっている事例報告がありました。まだ試験的な試みですが、「望ましい行動」を設定して事前・行動・事後の記録を重ねているところのようです。

最後に、入澤医師は、今回この取り組みを開始した理由は精神科病院として強度行動障害をお持ちの患者さんのように困難な状況にある方々へ少しでも患者さんにとってより良い効果をもたらせるように常に考えてアプローチを行っていくべきだと感じたからだと結びました。

強度行動障害勉強会の様子2