11月25日、市内の精神科病院が連携して運営する「多職種で考える精神科臨床の会(特別講演)」がWEB形式で開催されました。今回は一般社団法人日本うつ病センター・産業メンタルヘルスセンター長および産業医科大学名誉教授でいらっしゃると同時に、医療法人社団新光会 不知火クリニック院長としてもご活躍の中村純先生から「コロナ禍におけるメンタルヘルス不調」について、ご講演いただきました。
中村先生の講演内容は、この約2年におよぶコロナ禍の状況を振り返り、改めて精神科医療の役割を考えるというものでした。まず現在コロナ禍のメンタルヘルスへの影響としてはうつ状態やうつ病が徐々に増えている、しかも欧米諸国では多くの感染者を出しながらも自殺に至るケースは少ないが、日本では若い女性や高齢男性の自殺が増えているという現象が見受けられるとのことでした。また、コロナ感染の副作用として「気力が出ない」「食欲がない」「眠れない」などの症状が以前続いており、全体的に「心の後遺症」ともいうべき状態が生じているケースの少なくはなく、並行して若年層に認知機能の低下もみられるとのこと。勤労者においては、コロナ症状の回復後も「起きれない」「仕事に集中できない」 という状態のケースもあり、臨床の現場ではうつ症状に抗うつ剤を使用しながら患者さん一人一人に合った薬の使用がより一層必要であると感じていらっしゃいました。最後に、今後長引くコロナ禍およびコロナ後に精神科の役割は多岐にわたり増えてくると思われると締めくくられました。
なお、これまでアナウンスされてきた「ソーシャル・デスタンス」という言葉は社会的な孤立を招きやすいように思われるので、「フィジカル・デスタンス」のように物理的には離れているという表現のほうが好ましいのではという提案もなさいました。