私は油山病院に勤務する看護師です。今回、今までの経験の中でパーソナリティ障害と診断される方々との関わりを通して感じたことを少しお話させていただきます。
皆さんは、自分の気持ち(感情)を他者に伝えることができますか? 自分の気持ちを言葉にして表すことができますか? 私が関わる方々は、自分の気持ちを”何らかの理由”で伝えられなくなっていたり、伝えることを諦めてしまってたり、時には「言葉に出来ない」あるいは「言葉が見つからない」と話してくださいます。そして、自分の内で膨らんだ気持ちを抱えることが出来なくなり、言葉ではなく行動化や身体化といったかたちで表出されるのです。その”何らかの理由”とは、人と人との関係の中で長い間苦しみや葛藤を一人で抱えざるを得ず、何とか生き延びてこられた課程だと思います。そのため、私たち治療者はそのような方々が当院を訪ねられお会いできた時に、まずは心がほっとします。どのようなかたちでも、治療者とつながることが出来たことに安堵するのです。
そのような方々と関わる中で、看護師として私が一番大切にしているのは、その“言葉にならない気持ち”に向き合うことです。行動化や身体化といったものは、時に激しく、看護師も含め動揺してしまうことが多々あります。リストカットや過量服薬など、自身を傷つけてしまうような行動は、生命の危機にも至る場合があるため、看護師もその場面に出くわした際には緊張してしまうのです。しかし、先述しているように、その行動一つひとつにはその方の気持ちが隠れています。行動だけを見るのではなく、そこに隠れた気持ちに向き合うことが必要だと思います。言葉にならない心の叫びから、少しでも気持ちを理解し言葉にして差し上げることが出来ればと向き合い続けています。
そうして、入院治療・外来通院における診察やカウンセリングなどを通じ、少しずつ自身と向き合い、その気持ちを言葉にして表現することが出来るようになられます。時間も必要ですが、それだけ抱えているものも大きいのです。私たち看護師は、そのような方々と共に向き合い、より良い治療が継続できるように支援させていただきたいと思っております。
最後に、支える側の皆様へお伝えしたいことがあります。行動化や身体化により、どのように対応すればよいのかと悩まれることもあるかもしれません。支える皆様にも様々な悩みや葛藤があるかと思います。支えるために犠牲にしていらっしゃることもあるでしょう。しかし、まずはその気持ちを横に置いて、ご本人の話に耳を傾けてみてください。苦しみや悲しみといってもその感じ方はそれぞれに違うことも分かってきます。その方の気持ちを少しでも理解できるように、向き合い続けていただきたいと思います。

油山病院 看護師 福島凌